2010年8月アーカイブ

テスラ決算発表とmodel S(木村 忠昭)

電気自動車関連のニュースが連日紙面をにぎわせている。
先日上場を果たしたアメリカの電気自動車メーカー、テスラモーターズの株式公開後初の決算発表が行われた(http://ir.teslamotors.com/releasedetail.cfm?ReleaseID=496497

 

足元の業績をみると2010年4月-6月の第2四半期の売上高は、roadstarの新モデルの売上などが寄与し3ヶ月間で2840万ドル(為替レート@85円換算で約24億円)であるのに対し、売上総利益は626万ドル(為替レート@85円換算で約5億円)となっている。
また、この四半期の利益率は約22%となっており、現行で販売されている製品ラインナップでの利益率(粗利率)は改善がみられる。
一方で、販管費の内訳における研究開発費が3ヶ月間で1541万ドル(為替レート@85円換算で約18億円)となっており、その他の販売費用や管理費用などを含めると、純損失の金額は第2四半期でみると、3851万ドル(為替レート@85円換算で約32億円)の着地であった。赤字はmodel Sの販売開始の2012年まで続く見通しとのことである。

 

IPOで得た資金や連邦政府からの低利融資を研究投資に回し、2012年販売開始のmodelS(http://www.teslamotors.com/models)の開発を順調に進めている模様。同プレスリリースによると、モデルSの開発進捗状況としては、外装デザインはCADデータも含め高い精度で完成しており、主要な部品は手配が進められている。また、model Sに使用されるバッテリーとパワートレインは、既に社内で製造され、現在テストが始まっているとのこと。世界初の電気自動車の大量生産を標榜し、目標生産台数は年間2万台、販売価格は日本円で500万円を切る見通し。今後は、このような大量生産を行うためのNUMMI工場を含めた生産ラインの準備などが鍵になる。

 

電気自動車は、従来のガソリン車に比べ部品点数も少なく、ベンチャー企業の参入が比較的容易であるとの見方もある。旧来の自動車メーカーが、ガソリン車用の既存の設備や人員を含めた「重たい柵」の足かせを考えると尚更であろう。ただし、量産となると、新興企業にとっては、コストや経験値含め高いハードルになる。そう考えると、電気自動車の量産には「ベンチャー企業+旧来の自動車メーカー」という二人三脚も現実味を帯びる。この二人三脚は、当然に国境を超え、色々な組み合わせが考えられるが、テスラモーターズの構図は「米ベンチャー企業+日自動車メーカー」の組み合わせだ。

 

2010年7月16日付のトヨタ自動車ニュースリリースによると、トヨタ自動車はテスラモーターズと業務提携契約を締結し、2012年の米国市場での市販を目指し、テスラのEVシステムを搭載したトヨタRAV4ベースの試作車1台が完成しており、トヨタは評価を実施しているようである(http://www2.toyota.co.jp/jp/news/10/07/nt10_0713.html)。

 

トヨタ自動車は、米国市場でのリコール問題に苦渋をなめてきたが、事故を調査してきたアメリカ運輸当局は8月10日、議会に対し、「原因とされた電子制御システムに欠陥は見つからなかった」との中間報告を行ったとの報道があった。また、ウォール・ストリート・ジャーナルによる、アメリカ運輸省がトヨタに有利になる調査結果の公表を意図的に避けていたという報道も記憶に新しい。この苦境を乗り越え、また、NUMMI工場を含めた雇用創造によるアメリカ経済への貢献を合わせ、実力を持つ「日自動車メーカー」には、電気自動車という新しい分野でも、力を発揮してほしいものである。

 

そして、海外発の電気自動車の開発が加速してきているため、日本発の電気自動車も、後塵を拝さないよう、急ピッチで進める必要がありそうだ。(木村 忠昭)

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