2010年11月アーカイブ

 本田技研工業(ホンダ)がついに電気自動車(EV)の市販型を発表した。20101117日に始まった米ロサンゼルス・オートショーに、コンセプトカー「フィットEVコンセプト」を出展したのだ。

コンセプトカーを名乗るものの、ホンダではこのモデルを用いた実証実験を年内に日米で開始し、ユーザーの電動化技術に対するニーズや使い勝手を研究したうえで、2012年の発売を目指すというから、ほぼこの内容で市販化が始まると見ていいだろう。

 

これまでホンダは、燃料電池自動車の研究開発を地道に進めながら、市販車についてはハイブリッドカーで対応してきた。EVについては、どちらかというと冷静な態度を取り続けてきた。


その状況に変化が訪れたのは、昨年6月に伊東孝紳氏が社長に就任してからだった。同年秋の東京モーターショーでは、「電気を供給する製品から電動化したモビリティまでを考えたビジョン」を総合的に表現すべく、Honda Electric mobility Loop=「HELLO!」というコンセプトを打ち出した。

ホンダが「電動化」という言葉を用いたのは、このときが初めてだったと記憶している。


さらに今年7月の年央社長会見では、「良いものを早く、安く、低炭素でお客様にお届けする」というメッセージのもと、2012年に日米でEVを発売すると表明している。その具現化がフィットEVコンセプトなのである。


 

  モーターは旧エンジンルーム内に置かれ、前輪を駆動する。航続距離は160Km、最高速度は144Kmh、充電時間は120V12時間となっている。「NORMAL」「ECON」「SPORT」の3つのドライブモードの選択が可能であること以外は、現在の電気自動車技術としては平均的な内容といえるだろう。

しかもモーターは、燃料電池自動車FCXクラリティと同じギアボックス同軸タイプを採用している。リチウムイオン電池にも、燃料電池自動車などで培った経験を生かしたという。フィットの車体を流用したことを含め、既存のテクノロジーを有効活用することで生まれたクルマということができる。


ホンダというブランドイメージから、専用設計の車体にインホイールモーターを備えるなど、斬新な内容を期待した人も多いだろう。そうならなかったのは、社長年央会見の言葉にもあるとおり、EVをできるだけ早く、そして安く出したかったからに違いない。


ホンダと同じように、EVに関してはどちらかというと慎重な態度を取っていたトヨタ自動車も、同じロサンゼルス・ショーに、テスラモーターズと共同開発したRAV4EVを出展した。こちらも2012年の市販を予定している。

風向きは急に変わりつつある。それをホンダもトヨタも認識したからこそ、ここへきて市販型EVの発表へと舵を切ったのではないだろうか。 (森口将之)

このアーカイブについて

このページには、2010年11月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2010年8月です。

次のアーカイブは2010年12月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。