2010年12月アーカイブ

6月29日に設立された電気自動車普及協会(APEV)が、初めてのシンポジウムを東京で開催した。会場を訪れた私は、まず受付に並ぶ長蛇の列に驚かされた。この協会が秘めるパワーに、始まる前から圧倒されてしまった。

 

なんとか席を確保すると、ほどなくしてシンポジウムが始まった。まずは中島徳至代表幹事、関東運輸局自動車技術安全部の野津真生部長、田嶋伸博幹事と、この半年間APEVがメインテーマに掲げてきた「EVコンバージョン」の推進役となってきた3名の講演から始まった。

 

20101217-1.jpg 中島代表幹事からは、半年間の活動状況が紹介された。設立当初は35にすぎなかった加盟企業・団体数が現在では130に達していることや、来年は「EVビジネス情報部会」と「地域コミュニケーション部会」を新規に立ち上げることが発表された。

 

20101217-2.jpg 野津部長からは、コンバージョンEV成功のためには安全性・信頼性の確保が大前提という要望が出された一方、APEVの規格をアジア諸国と共同で国際標準化していきたいという、世界を見据えた発言も聞かれた。

 

20101217-3.jpg そしてEVコンバージョン部会長を務めた田嶋幹事からは、ガイドラインの礎となる自主規制項目が公開された。当日は緊急性の高い6項目が発表されたが、今後も引き続きガイドライン完成に向けて、検討を進めていくという。

 

 

 

たった半年で加盟企業・団体数を4倍に増やし、EVコンバージョンのガイドライン草案という結果をしっかり出したことは驚きだ。しかも来年は同様の部会が3つに増えるという。関係者の健康を心配したくなるほど積極果敢な活動である。

 

休憩のあとは、まず自動車専門ウェブサイトのレスポンスから、編集部の宮崎壮人氏がEVに関する意識調査の結果報告を行った。女性や若者は満充電での航続距離に不満を抱いておらず、愛車をEVコンバージョンしたい人は半数近くに上るなど、マスメディアの報道とは異なる発表内容はとても参考になった。

 

アメリカを中心に設計・製造用デジタルツールを提供し、本国ではテスラともパートナーシップを結んでいるというオートデスクの舟木覚氏は、今後は日本のEVベンチャー企業向けにプログラムを準備する予定であることを表明し、会場に詰め掛けた企業家たちに参加を呼びかけていた。

 

 今年初開催された国内で唯一のEV専門展示会、電気自動車開発技術展(EVEX)の事務局を務めるアテックスのコンベンション事業本部チーフディレクター岡田繁氏からは、来年のEVEXがAPEVとの共催になることが発表された。2つの組織がタッグを組むことで、今年188を数えた参加企業・団体が大幅に増えるのは確実だろう。

 

20101217-4.jpg 続いて登場したのは、経済産業省製造産業局自動車課で電池・次世代技術室長、ITS推進室長を務める辻本圭助氏。中国は地方に多く存在する農民車をすべてEVにしようと考えていること、規格標準化においては根底を合わせることが大事であるなど、参考になる話の連続だった。

 

20101217-5.jpg 9月にAPEVに加盟したことで注目されたトヨタ自動車の東京技術部、永田雅久部長も、同社の環境技術開発戦略について講演した。EVのみならず、プラグインハイブリッドカーや燃料電池自動車などを同時に開発し、次世代電池の研究まで進めているという。トヨタの規模の大きさをあらためて教えられるとともに、そんな同社がAPEVに加盟した事実に時代の変化を思い知らされた。

 

 ふたたび休憩のあと、今度は愛媛県と長崎県のEV取り組み事例が、2名のAPEVアドバイザーから発表された。

 

20101217-6.jpg 愛媛県EV開発センター長の佐藤員暢氏は、9月に完成したダイハツ・コペンのEVコンバージョンを紹介。開発に際しては県内にある高度な技術力を持つ企業を起用し、一般整備工場で働く技術者を集めて人材育成も行うなど、地域の発展を念頭に入れた「走る実験室」であることをアピールした。

 

20101217-7.jpg 長崎EV&ITS(エビッツ)推進担当製作監の鈴木高宏氏は、五島列島にアイミーブのレンタカーを100台導入するとともにITSを活用することで、島内に点在する「隠れキリシタン」の観光地を廻る足として活用しており、利用者は順調に増加していることを報告していた。

 

ヨーロッパにおいては、この種のモビリティ改革は小回りが効く地方都市からまず実践され、中央へと波及している。日本もその流れが始まったのかもしれないと、期待を抱かせるプレゼンテーションだった。

 

20101217-8.jpg 講演終了後、来賓として挨拶に立った内閣官房副長官の古川元久氏は、電気が基盤になるエネルギー社会へオールジャパンで取り組んで行くことが、日本が混迷の中から抜け出る第一歩になると語り、EVコンバージョンの推進にエールを送った。

 

20101217-9.jpg 最後にAPEV会長の福武總一郎氏が登壇。世界には自国でクルマを作らず、資源のほとんどを輸入に頼る国が多いことを挙げ、EVコンバージョンはこうした国の貿易収支を改善するなど、世界的に見ても有益な事業であるというメッセージを送った。

 

 

 5時間にもわたる長いプログラムだったが、終わってみれば時の経過を忘れさせる濃密な内容の連続だった。それ以上に実感したのは、会場全体にうずまく活気だった。「クルマ離れ」に悩む現在の自動車業界とは別種の空気がそこにあった。この活気が次世代への扉をこじ開ける原動力になるのだと実感した。

 

(森口 将之)

【総評】
 ゼネラル・モーターズ、フォード、クライスラーといったビッグ・スリーの本拠地で開催されるデトロイト・ショーが"アメ車の祭典"であるのに対して、ロサンゼルス・ショーはより公平でリベラルに各国の自動車メーカーが主義主張を発表できる場になっている。トレンド発信地でもあるロサンゼルスで開催されるモーター・ショーだけに、特に先進層にアピールする最新の情報発信が盛んであり、エコ・コンシャスの高い住民性を反映して常に先進的な環境対応が発表されている。


 近頃は、ハリウッド・スターがエコカーに乗り、オーガニック・フードを選ぶなど、地球環境問題への対応が最新トレンドとしてメディアにも取り上げられることが増えており、ロサンゼルス・ショーも年々、よりエコ・コンシャスの高いショーになりつつある。プレスデー2日目にはグリーンカー・オブ・ザ・イヤーの発表が行なわれることもあり、最近では別名「グリーンカー・ショー」とも呼ばれるほどだ。


 今年は、特に日本車メーカーのEV発表が相次いだ。こうした動きは2012年から施行されるZEV法を睨んだものであり、欧州車メーカーは10月に開催されたパリ・サロンで同じようにEVやプラグイン・ハイブリッドを続々と発表した。環境問題への対応は自動車メーカーにとって厳しい要求ではあるが、我々ユーザーにとっては、自動車がよりエコ・コンシャスになり、"エコカー多様性"の時代が来ることは歓迎すべきだろう。ZEV法が施行される2012年には、ロサンゼルスは世界でも類を見ないEV王国になっているかもしれない。

 

■ホンダ「フィットEVコンセプト」
 伊藤社長が渡米してプレスカンファレンスを行なったホンダは、「フィットEVコンセプト」を中心に、ハイブリッド、燃料電池、プラグイン・ハイブリッド、EV、そしてインフラ整備にいたる総合的なエコカー戦略を発表した。ホンダはこれまで、EVに対して積極的ではなかっただけに、今回のEVの発表は衝撃も大きかった。ただし、EVは都市型コミューターと用途を限定している点にホンダのEVに対する真意が見て取れる。


 具体的には、燃料電池車である「FCXクラリティ」をエコカーとして究極のフラッグシップと位置づけ、そこに向かうための"掛け橋"としてのハイブリッドを強調。ただし、その"掛け橋"は長いことも強調し、燃料電池車に移行する過程として、プラグイン・ハイブリッドを開発すると発言した。これらのロードマップに加えて、都市型コミューターの位置づけで「フィットEVコンセプト」を発表。年内に実証試験を開始し、2012年には量産モデルの発売を目指す。


 明らかにされている一部の情報からは、ホンダのEVへの姿勢が垣間見れる。プラグイン・ハイブリッドは2モーター式のハイブリッドを搭載しており、モーターのみで10-15マイルの走行が可能である。「フィットEVコンセプト」は、1回の充電で走れる距離は北米の燃費測定モードで100マイル程度、最高速は90mph(約144km/h)を確保。「CR-Z」同様、3種の走行モードを備えており、ノーマル・モードに対して、E-CONモードでは17%の燃費向上となる。スポーツ・モードに対して、E-CONモードでは25%の燃費向上となる。「FCXクラリティ」と同じ136ps/256Nmの大出力モーターを搭載することにより、パワフルな走りを提供する。EVをあくまでシティ・コミューターとして割り切った反面、EVでもドライビング・プレジャーの創出に余念がないのはホンダの真骨頂である。

 

■トヨタ「RAV4EV」
 トヨタは、提携関係にあるテスラ・モーターズとの初の共同制作として、2代目「RAV4EV」を発表した。記者発表の会場に、CEOであるイーロン・マスク氏が登場したことでさらなる話題を誘った。


 詳しいスペックは明らかではないが、3.5LV6エンジンを積む米市場向け「RAV4」と同等の0-96km/h加速を実現するというトヨタの主張から察するにかなりの高出力のモーターを搭載すると考えられる。EV化にあたっては、現在、30kWh中盤の出力のリチウムイオン電池を搭載しているが、詳細は2012年の市販までに決定される予定として秘されている。車両重量の増加をエンジン車と比べて220ポンド(100kg)程度の増加に留めており、1回の充電で走れる距離は約160kmを確保した。製造はカリフォルニア州Palo
Altoにテスラが新設する生産施設にて行なわれる。2012年には次世代の新型ハイブリッド機構を搭載した7モデルを発表し、2015年には燃料電池車を市販にこぎつけるという計画だ。


 また、LAショーのプレスデーと同日に日本でも「環境技術取材会」と銘打ったイベントを開催し、EVの用途を都市型モビリティと限定した上で「iQ」のEV版を発表した。

 

■三菱i-MiEV
 北米の衝突安全基準に沿う形でボディサイズを拡大した「i-MiEV」が2011年に北米市場に投入される。全長×全幅×全高=3680×1585×1615mmは、日本の軽自動車規格と比べて、285mm長く、110mm広く、5mm高い。トレッドを広げ、異なる形状の前後バンパーを装着している。安全装備などは北米の基準に沿って整備されるが、駆動系のメカニズムは日本仕様と変わらない。


 三菱は、インフラの面で興味深い発表をしている。北米の家電量販店の大手であるベスト・バイ社、電気制御製品や配電設備を手がけるイートン・コーポレーションと、EVの充電に関するインフラ整備において提携する。チャデモ協議会で検討される急速充電設備に関しても、イートン社が協力する。ベスト・バイ社は、「i-MiEV」を購入したユーザー向けのサービスとして、自宅への220V電源の配線や使用している電圧の調査などを通して、インフラ整備を行なう予定。

 

■日産リーフ
 5月の段階ですでに北米で予約が開始されており、市販版としてショー会場に並んだモデルに目新しい点はない。価格は3万2780ドルで、政府からの助成金が最大7500ドル受けられる。その他、カリフォルニアのように独自に助成金を設定している州もある。

 

■フィスカー・オートモーティブ
 デザイナーのヘンリック・フィスカー氏が2005年に設立したプラグイン・ハイブリッドのヴェンチャーであり、テスラ・モーターズとはライバル関係にある。フィスカー氏は、BMWに在籍して「Z8」などのデザインを担当。フォードに移籍後は同グループ傘下のアストンマーチンで高級スポーツカーのデザインを手がけた。


 フィスカーの生産モデルである2人乗りの4ドア・クーペ、「カルマ」に搭載れるプラグイン・ハイブリッド機構は、軍事メーカーであるクワンタム・テクノロジーズにより提供される。燃費は、約42.5km/L。


 資本はクエート投資庁や大手投資会社クリーナー・パーキンスらから調達しており、本社はカリフォルニア、研究開発はデトロイトに拠点を置く。「カルマ」の価格は8万7900ドルで、ポルシェが生産委託を行なっているバルメット・オートモーティブ社にて2012年から年間1万5000台を生産する予定だ。さらに、BMW3シリーズ同等のサイズで4人乗りのプラグイン・ハイブリッド、「モデルS」は、4万ドルを切る価格で2012年に10万台規模で生産を開始する予定。

 

■KiaPOP
 韓国車メーカーのKiaは、10月のパリ・サロンで発表したEV、「POP」をLAに持ち込んだ。コンセプトカーに過ぎないが、ルーフがガラス張りで室内には2+1人が乗れるというユニークなレイアウトが特徴だ。

 

■CODA
 コーダ・オートモーティブ社は、マイルス・ルビン氏が代表を務めるEVベンチャー。2010年に中国で生産した「コーダEV」をカリフォルニア州で限定発売し、2011年には2万台の販売を目標にすると息巻くが、割高な価格にもかかわらず、デザインは地味で、技術やスペックに目新しいものがないため、メディアの反応は冷ややかだった。


 コロラド州UQM社製のモーターは、最高出力134ps/最大トルク30.6kgmを生む。シャシーに内蔵されるリチウムイオン電池は、中国第2位の大手電池メーカーである天津力神によって製造される。33.8kWhもの大容量であり、定格電圧333Vを備える。加速の指標である0?96km/hは11秒以下、最高速は129km/hを確保。110Vまたは220Vの家庭用プラグで充電ができ、1回の充電で走れる距離は193kmに達する。気になる衝突安全基準は、ユーロNCAPの4?5スターを目指したという。

 

■Weego
 Weegoは、Low Speed Vehicle(最高速35mph以下の低速車)のカテゴリーに属すると謳われるが、スペックに表記された最高速は65mphとなっている。全長×全幅×全高=3010×1605×1600mmのボディサイズに、2人乗りというパッケージングとユーモラスなデザインは、どことなく「スマート・フォー・ツー」に似ており、中国のモーターショーで見る"ソックリ・カー"のようだ。最大で60kW(定常20kW)/129Nmの出力を生むモーターを搭載し、1回の充電で160kmの走行が可能である。

 

■グリーンカー・ライド&ドライブ
 ロサンゼルス・ショーの地下駐車場では、グリーンカー・オブ・ザ・イヤーを主催する『グリンカー・ジャーナル』によってエコカーの試乗会が開かれていた。その中に、4月のニューヨーク・ショーで発表されたリンカーン「MkZハイブリッド」や、1月のデトロイト・ショーで登場していた「ボルボC30エレクトリック」などを見つけたので試乗した。


 「MkZハイブリッド」は、リンカーン・ブランド初のハイブリッドとして話題になった。アトキンソンサイクルを採用した2.5L直4ユニットと東芝製モーターの組み合わせにより、トータルの出力は191psを生む。3.5LV6エンジン搭載モデルとハイブリッド・モデルの価格差はない。ユーザーは、パワーかエコかを好みで選ぶ。


 「C30エレクトリック」は、111psを生むモーターと、24kWhの容量を持つリチウムイオン・バッテリーを搭載することにより、0-100km/h加速を10.5秒でこなし、最高速は130km/h、1回の充電で走れる距離は150kmに達する。

 

(川端 由美)

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